アンカレジのFUR ALASKAは 毛皮の専門店。
故植村直巳の本に、彼がその店によく立ち寄ったことが書かれていた。
初めての海外でアラスカに行った時、ふとその店のことを思い出した。毛皮を買うつもりなどさらさらないのに、入国してまもなく心細くなってその店を探した。古い看板を掲げた店には、ジャコウ猫やキツネ、ウサギなどたくさんの毛皮が並んでいた。
そこには 黒ぶちの眼鏡をかけた片言の日本語を話すOLD JACKという名前のおじいさんがいた。人なつっこい感じの彼は、いちげん屋の僕にもいろんな話をしてくれた。アラスカの山々や氷河の話、オーロラや先住民族の話、絵の話―。そして彼は、世の中にはココロにひびく絵がきっと一枚ある。その絵を探しに世界中の美術館を回るのが私の夢だ とも言った。
5年後、もう一度訪れた時には店は閉まっていた。 そして手紙の返事もないところをみると、きっとその一枚を探しに歩いているんだろうと思う。 そんな旅行の楽しみ方もいいなぁ。